医師が語るアレルギー性結膜炎の症状と治療法、対策のポイント

アレルギー性結膜炎とは

アレルギー性結膜炎とはアレルギー反応を起こす物質(アレルゲン)が、呼吸によって体内に入ることや、目の表面に付着することで、眼球の結膜と言う場所に炎症を引き起こす病気です。アレルゲンに具体的に季節性のものや、非季節性のものがあります。季節性のものだと、例えばスギ、ヒノキ、イネ、カバノキ等の花粉によって生じるのや、非季節性のものだと、イヌ、ネコ、ダニ、金属、薬剤等によって生じることが知られております。

アレルギー性結膜炎とは

アレルギー性結膜炎の症状

アレルギー性結膜炎の症状としては、目の痒み、腫れ、目の異物感が生じます。アレルギー性結膜炎が生じると、結膜の乳頭と言う部分の増殖が認めらます。痒みや腫れはご存知の方もおられると思いますが、乳頭増殖については聞かれない方が多いのではないでしょうか。
では乳頭増殖について画像を用いて説明します。下記の画像ですが左は正常な人の上まぶたを裏返した時の画像ですが、凹凸はありません。真ん中の画像はアレルギー性結膜炎の患者さんですが表面に少し凹凸があるのが分かります。この凹凸の部分が乳頭増殖の状態です。右の画像ですがここまでくると凹凸が明瞭となり強い乳頭増殖が生じているのが分かります。乳頭が巨大に増殖しているので、巨大乳頭結膜炎と呼ばれます。この状態になると、巨大乳頭がヤスリのような状態になり、角膜障害などを生じることが知られています。

アレルギーの治療

アレルギーの治療ですが、眼科の場合は点眼加療が一般的です。点眼の種類には軽症な場合だと痒みが生じる物質を抑える、抗ヒスタミン薬、ケミカルメディエーター抑制薬、重症な場合だと、ステロイドの点眼治療や免疫抑制薬を用いることがあります。

アレルギー性結膜炎の対策

アレルギー性結膜炎の対策のポイントは、日常生活でできるだけアレルゲンに触れないことです。例えば、花粉症の場合ですと、花粉症対策用のメガネの装着やマスクの使用、帰宅時に衣類についた花粉を払い落とす、帰宅後は手洗い、うがい、洗顔を心がける。

また、ハウスダストの場合では掃除をこまめに行うことや、畳や絨毯にダニが繁殖しやすいことから、フローリングに変更や絨毯を天日干しすることが効果的です。

では、最後にアレルギー性結膜炎のことで患者さんによく質問されることについてQ&Aという形で簡略的に述べたいと思います。

よくあるご質問とその回答

Q1:自分のアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)を知ることはできます?
A1:スクラッチテスト(アレルゲンの物質を皮膚に接着させて反応をみるテスト)や皮内テスト(アレルゲンを直接皮内に注射して反応をみるテスト)や採血検査で分かります。

Q2:アレルギーの原因となる花粉にはどんなものがあるのでしょうか?
A2:アレルギーの原因となり花粉には先程の説明に書いているように、スギ、ヒノキ、イネ、カバノキに加えヨモギ、ブタクサ、イチョウなどが知られております。大切なことは、自分がどの種類の花粉がアレルゲンなのかを知ることだと考えます。

Q3:コンタクトレンズでもアレルギー反応が出ると聞いたことがあるのですが本当でしょうか?
A3;一般的に2weekタイプのコンタクトレンズでのアレルギー反応が生じることがあります。コンタクトレンズの場合は痒みを伴わず、巨大乳頭結膜炎が生じることが多いです。これはコンタクトに付着したタンパク質等が原因となって生じます。コンタクトを使用している方で違和感が生じている場合はすぐに眼科を受診しましょう。

Q4:運動や入浴後に目の痒みがひどくなります。どうしてでしょうか?
A4:運動や入浴等によって体を温めると、痒みの原因となるヒスタミンという物質が体内で通常より多く生じることがあります。これを温熱蕁麻疹(じんましん)と言います。温熱蕁麻疹が疑われる場合には、病院で実際に温熱刺激を皮膚に加え、その後の皮膚変化を医師が評価する検査が行われることもあります。

Q5:毎年スギ、ヒノキの花粉症で悩まされるけど、予防はできないのでしょうか?
A5:花粉症では、花粉の飛びはじめる約1カ月前から抗アレルギー点眼薬を点眼すると、症状が軽くなったり、症状が生じる期間が短縮されたりします。
スギ花粉症であれば、毎年2月頃に花粉の飛びはじめる時期なので、抗アレルギー点眼薬を1月の中旬からつけておけば安心です。毎年スギ、ヒノキの花粉症に悩まされている方は、1 月中に眼科を受診し、抗アレルギー点眼薬を処方されるのが最適です。

医師が語るドライアイの症状と治療法

ドライアイとは

ドライアイとは目を潤わす涙の量が不足や、涙の質が悪くなることによって、涙が均等に行きわたらなくなる病気であり、目の表面(角膜)に傷や痛みなどを生じる病気です。涙の量や成分の異常により乾燥した状態が慢性的に続いている状態です。

例えば、瞬きをしないで目を見開いていると、30秒も経過しない間に痛くなりますよね。
ドライアイになると、この瞬きをしていない状態と同じことが慢性的に生じます。特に、エアコンの使用、パソコンやスマートフォンの使用、高齢化によるものやコンタクトレンズ装用者の増加に伴い、ドライアイになる人が増えており、その数は約2千万人ともいわれています。

ドライアイの症状

ではドライアイの症状ですが、皆さんはどんな症状を思い出すでしょうか?
多くの人は目がコロコロする、痛くなる、重たい感じになる、疲れやすい、充血すると言った症状を思い浮かべるのではないでしょうか。

ドライアイになると上記の症状が生じますが、それ以外に大変驚かれるのですが、涙がよく出る(涙目になる)と言った症状も生じます。
ではどうして涙目になるのでしょうか? 

その説明には下の画像を用いて説明します。
下記の画像は目も表面を特殊な染色液で染めて青色のライトで観察している画像です。右端の画像が正常の人の写真です。正常の場合、目の表面が均一に青緑に染色されており。しかしドライアイになると砂粒のような点状のスポットが無数に出てきます。これは点状表層角膜炎と言われており、ドライアイによる目の表面の傷です。実はこの目の表面の傷を修復するために涙を出そうとしているのです。

ドライアイの画像

ドライアイの治療

ドライアイの治療には点眼加療によるもの、涙点プラグによる治療が一般的です。
実は涙は外側から順に、油層・涙液層・ムチン層の3層構造からなっています。
いずれかの層が不足すると涙の安定性が低下し、目の表面に定着しなくなります。そこでムチンの分泌を促し、涙そのものの量を増やす点眼薬や、保湿を目的として、ヒアルロン酸を含む保湿効果の高い点眼薬を用います。次に涙点プラグの治療ですが、これは涙を目から鼻にかけて吸収する通路(涙道)を小さなシリコーン製のプラグ栓で塞ぐことにより、涙の排出を止めて目の表面に涙を溜めます。(下図参照)
また、非常に稀ですが上記の治療を行っても治らない場合は涙の栄養分が足りないことが多く、自己血清点眼という治療を行うこともあります。
自己血清点眼とは患者さんから採血を行い、採取した血液を遠心分離させ上澄みにできる淡黄色の成分を希釈して点眼します。
血清には多くの涙液と同等かそれ以上の生理活性物質が含まれており、治療効果があることが知られております。

では、最後にドライアイのことで患者さんによく質問されることについてQ&Aという形で簡略的に述べたいと思います。

よくあるご質問とその回答

Q1:処方されている点眼の他に市販の点眼も追加でしたいのですが、どのようなものがよいのでしょうか?
A1:処方されている点眼に加えての追加になると、防腐剤が入っていない点眼が望ましいです。防腐剤が入っていると頻回点眼を行うことによって目の表面に傷がつくことがあります。

Q2:ドライアイにならないための対策を教えて下さい。
A2:ドライアイは先程述べたようにエアコンの使用、パソコンやスマートフォンの長時間の使用、コンタクトレンズの長時間の使用によることが多いです。エアコンの場合ですと、直接風が当たる場所を避けることや加湿器などの利用、パソコンの場合は1時間毎に10分程度の休憩が望ましいとされています。また、コンタクトの場合は特に必要の無い場合には眼鏡を用いることも大切です。

Q3:ドライアイの治療に目を温めるとか効果があるでしょうか。
A3: 瞼の縁には涙の中に油を出すマイボーム腺というものがあります。この場所を少し温めることで分泌が良くなり、涙の性質も良くなりドライアイ治療にも有効であることが知られています。

糖尿病網膜症について

糖尿病とは

糖尿病網膜症について説明をする前に、まず糖尿病網膜症の説明の前に糖尿病について簡単に説明します。糖尿病の患者さんの人数は日本で320万人と推計されています。糖尿病の症状ですが、早期の段階では殆ど症状はなく、悪化すると喉の渇きや頻尿や疲労感などが生じることが知られており、目(糖尿病網膜症)、腎臓(糖尿病腎症)、神経(糖尿病神経障害)など様々な場所にも合併症を引き起こします。
では本題の糖尿病網膜症ですが、日本での失明原因の第3位(2017年までは第2位)となっています。なぜこれほど失明原因の上位になっているのかと言いますと、幾つか要因が考えられますが、糖尿病網膜症は進行するまで症状が出ないことが一つの要因として知られています。糖尿病網膜症は症状の悪化に応じて名称がつけられています。

糖尿病網膜症の分類

糖尿病網膜症がない状態(NDR:no diabetic retinopathy)、単純糖尿病網膜症(SDR:simple diabetic retinopathy)、前増殖糖尿病網膜症(PPDR:pre- proliferative diabetic retinopathy)、増殖糖尿病網膜症(PDR:proliferative diabetic retinopathy)の4つの段階に分けられています。
NDR→SDR→PPDR→PDRの順番で悪くなりますが、一番悪い状態の増殖糖尿病網膜症の状態で初めて自分が糖尿病網膜症であると気が付かれる方が多いのが現実です。では、それぞれの状態がどのような状態になっているのか目の奥の写真(眼底写真)を用いて説明します。

上記の写真をご覧になってください。
真ん中の写真では赤丸部分に非常に小さな出血が複数個あります。また、下方(緑丸)には輪郭のはっきとした白色の物質(硬性白斑)を認めております。この写真の様に糖尿病による網膜症で、小さな出血を認めている状態を単純糖尿病網膜症と言います。一般的にこの状態では自分自身で、糖尿病網膜症があることに気が付くことは殆どありません。

次に右端の写真を見てもらうと、単純糖尿病網膜症より広範で多数の出血が認められ、輪郭がぼんやりとした形状の白色の物質(軟性白斑)を認めております。この状態を前増殖糖尿病網膜症と言いますが、これだけ広範な出血が生じていても、自覚症状がないことがよくあります。

では一番状態の悪い増殖糖尿病網膜症についてですが、上の写真を見ての通りですが、眼底が分からないぐらいの大出血(硝子体出血)をしているのが分かります。この状態になって初めて眼科に受診されることが多く、手術を行っても視力が大幅に低下してしまうことが多いのが現状です。では何故この様な出血をするのでしょうか?実は糖尿病になると血流障害が生じるために、網膜に酸素(栄養)が行き届かなくなります。酸素の供給は血液のヘモグロビンから取り入れる為に酸素不足に陥った網膜は血管を増殖させます。これを専門用語で新生血管と言います。この新生血管という血管が脆弱で眼内に出血や更には網膜浮腫(黄斑浮腫)を引き起こす原因となります。

増殖糖尿病網膜症

糖尿病網膜症の治療

では次に糖尿病網膜症の治療について説明をします。まず、NDR(糖尿病網膜症無し)の状態では眼底に異常がないので治療の必要性はありません。半年から1年間隔で定期的な診察を行えば問題ないと思われます。続いてSDR(単純糖尿病網膜症)の状態です。この状態になると先程の説明の繰り返しになりますが、網膜に点状の小さな出血を認めるだけのことが多いので通常は治療の対象になることはありません。しかし、一部の方は網膜浮腫(黄斑浮腫)を生じることがあります。(下図参照)

網膜断層像

上記写真の右側の写真のように網膜に浮腫が生じた場合は、視力低下や変視(歪んで見えること)の原因となったりしますので、抗VEGF製剤という薬を眼球に注射します。抗VEGF製剤は網膜の新生血管の抑制作用や、網膜浮腫(黄斑浮腫)を軽快する作用があります。次にPPDR(前増殖糖尿病網膜症)の状態です。この状態になると網膜に新生血管が生じる手前の段階となります。そこで、新生血管が生じないように網膜にレーザーを照射します。(網膜光凝固術)照射された網膜には新生血管が生じることがないので、網膜全体に照射を行うことが多いです。更に、網膜浮腫が生じている場合には前述に説明したように抗VEGF製剤の注射を行うことになります。では、最後PDR(増殖糖尿病網膜症)の状態です。この状態になると、前述に説明した網膜光凝固術、抗VEGF製剤の治療に加え、硝子体手術を行う場合があります。しかしこの増殖糖尿病網膜症の状態になっていると網膜が長期に渡って痛んでおり、手術を行っても視力が出ないこともよくあります。以下に今迄の説明を簡略した表を載せておきます。

糖尿病網膜症の状態と治療

抗VEGF製剤、網膜光凝固術とは

次に抗VEGF製剤と網膜光凝固術について説明をします。視力低下の元となる黄斑浮腫は網膜下におこる新生血管の増殖、成長や、網膜内の毛細血管から漏れ出す血液成分によって引き起こされます。そして、その原因となる物質がVEGF(Vascular endothelial growth factor:血管内皮増殖因子)と言われています。抗VEGF薬治療は、このVEGFの働きを抑える薬剤を眼内の硝子体と言う場所に注射することで、新生血管や血管成分の漏れを抑制する新しい治療法です。新薬の治療で、1回の治療費が3割負担で概ね5万円程必要になります。注意点として硝子体内に注射を行うことから、眼内に細菌感染を引き起こす事が約2000人に1人の割合で生じる事が知られていますので、必ず注射翌日には診察が必要となります。また、この注射を行うことによって非常に低いですが、血管の梗塞を引き起こす可能性が示唆されております。心筋梗塞や脳梗塞の既往がある患者さんには注意が必要となりますので、心筋梗塞、脳梗塞の既往歴のある患者さんは必ず主治医に相談しましょう。

次に網膜光凝固術ですが、写真のように網膜にレーザーを当てる治療です。写真で丸いスポットが無数に認められておりますが、この丸い無数のスポットがレーザー治療を当てた跡です。レーザー治療をした場所は新生血管が生じにくいことが知られております。費用は概ね3割負担で5万円程必要になります。注意点としては、レーザーを照射後に一過性の飛蚊症(蚊が無数に飛んでいるように見えたり)や炎症が強く出ることがあります。術後しばらくの間は定期的な受診が必要になります。以上が糖尿病網膜症についての説明です。糖尿病の方は必ず、眼科を出来るだけ早く受診するようにしましょう。

よくあるご質問とその回答

Q1 現在糖尿病でHbA1cは10%でNDRの状態ですが、今後注意する点はありますか。
A1 食事運動療法を行い血糖値の改善をすることが大切です。しかし、眼科としての注意点は血糖値を急激に下げ過ぎないことです。毎月HbA1cを1%以内の改善を目標にしてもらう方が良いです。

Q2 SDRの状態ではレーザーを行わないのはどうしてですか?
A2 SDRの状態だと血糖が良ければNDRの状態に改善することがあるので、通常レーザー治療は行いません。PPDRまで悪化すると、元に戻ることはないのでレーザー治療となります。

Q3 抗VEGF製剤はどのぐらいの作用期間で、繰り返し打たなければならないのでしょうか?
A3 一般的に抗VEGF製剤の効果は1~2カ月と言われています。1回の注射で浮腫が完全になくなり再発しなければ問題ないのですが、実際のところ1回で完治される患者さんは少ないです。通常は複数回注射の投与が必要ですが、個人個人によって異なります。

Q4 現在HbA1c6%台で内科的には数字は良いのですが、眼科ではPPDRと言われ目の状態として良くないと言われました。血糖値もHbA1cの値も良いのにどうしてでしょうか?
A4 糖尿病網膜症は一般的に長期間の経過を得て生じるものです。ですので、今現在血糖値が良くても過去に血糖値やHbA1cが悪い数字が数か月以上続いていたなら、糖尿病網膜症が生じても不思議ではないです。

網膜静脈分枝閉塞症とは

網膜静脈分枝閉塞症とは文字通り網膜の静脈が詰まることで生じる病気です。ではどの様な症状が生じるかと言うと、飛蚊症や視力低下、時には歪んで物が見えたりすることがあります。

網膜静脈閉塞症には大きく分けて、2種類あります。1つは視神経内の網膜静脈が閉塞するタイプと、もう1つは視神経を通り超して網膜内で閉塞するタイプがあります。視神経内で閉塞するタイプを網膜中心静脈閉塞症(CRVO:Central Retinal Vein Occlusion)と呼び、網膜内で閉塞するタイプを網膜静脈分枝閉塞症(BRVO:Branch Retinal Vein Occlusion)と呼んでいます。網膜静脈分枝閉塞症は、よく植物の木で例えられるのですが、網膜中心静脈閉塞症は木の幹の部分が、網膜静脈分枝閉塞症は木の枝の部分が障害されるとイメージを持ってもらえると分かりやすいと思います。

網膜静脈分枝閉塞症

(網膜静脈閉塞症ドットコムより転用)

ではこの網膜中心静脈閉塞症と網膜静脈分枝閉塞症ではどの様な違いがあるか、目の中の写真(眼底写真)を見ながら説明します。まず網膜中心静脈閉塞症と網膜静脈分枝閉塞症の写真を見比べてみます。

網膜中心静脈閉塞症と網膜静脈分枝閉塞症ではどの様な違いがあるか

左端が正常眼底写真です。左側の白く丸い部分(赤丸部分)が視神経です。一方、真ん中の写真は網膜中心静脈閉塞症の患者さんの眼底写真です。視神経内の網膜静脈からの出血で、出血が全体的に広範囲に及んでいることが分かります。最後に右側の写真ですが、この写真が網膜静脈分枝閉塞症の写真ですが、上方部に部分的な出血を認めております。
網膜中心静脈閉塞症、網膜分枝閉塞症の違いは、網膜中心静脈は所謂木の幹の部分の障害なので全体的に広範囲の出血や重篤な視力障害や変視(歪んで見えること)を呈することが多く、網膜静脈分枝閉塞症は木の枝の部分の障害ですので部分的な出血や視力障害や変視が軽度なことが多いです。尚、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症は共に糖尿病網膜症のところで説明したように、網膜浮腫(黄斑浮腫)や新生血管が生じる事が知られております。尚、網膜浮腫や新生血管の詳細は糖尿病網膜症のページで記載しているのでこの分野では割愛します。

網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症の原因

ではこの網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症は何故生じるのでしょうか。一般的にこれらの病気の原因は高血圧が関与していることが多いことが知られております。その他に全身性エリテマトーデスなどの膠原病による網膜血管炎が生じた時にも稀に生じることが知られております。

では続いて、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症の治療についてですが、どちらの疾患も網膜光凝固術、抗VEGF製剤の硝子体内注射、ステロイド注射、更にこれらの治療が効かない場合には硝子体手術を行う場合があります。網膜光凝固術、抗VEGF製剤に関しては糖尿病網膜症のところに詳細が記載されておりますのでそちらを参考にしてください。尚、眼科的な治療以外に、先程述べたように高血圧症が原因になっていることも大変多く、内科での高血圧治療も行いましょう。

よくあるご質問とその回答

Q1:網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症は治りますか?
A1:一般的に両疾患とも治ります。しかしながら、完治するまで数年かかることが多く、その間に不可逆的な視力低下が生じることがあります。先程も述べたように、網膜中心静脈閉塞症の方が大幅な視力低下を招くことが多いのが現状です。

Q2:何度も抗VEGF製剤の硝子体内注射を打っています。何回ぐらい打つのですか?
A2:通常の場合ですと抗VEGF製剤は黄斑浮腫が治るまで繰り返し投与します。決まった回数制限もありませんが、一般的には2年程度で軽快し必要がなくなることが多いです。

Q3:日常生活で気をつけることはありますか?
A3:先程の説明にも書いていますが高血圧が原因で生じることが多いので、減塩を行い、血圧の管理をしっかり行うことが再発予防として重要だと考えます。

Q4:この病気で視力低下をしましたが戻りますか?
A4:個人差がかなりあります。一般的に網膜浮腫(黄斑浮腫)による視力低下の場合では、視力低下の期間が短ければ短いほど、早急に治療を行うことによって改善することが多いです。

緑内障について

緑内障とは

緑内障という病気を皆さんご存知でしょうか?
実はこの緑内障という病気は日本で失明の原因の第一位の病気です。
ではこの緑内障という病気がどういった病気なのか詳しく説明します。
まずこの緑内障という病気ですが、どういう病態か述べますと眼の中にある視神経が加齢や眼圧の上昇などによって痛んでしまう病気です。この視神経というのは映像を脳に伝える機能を有しております。
例えるならば、皆さんがデジタルカメラで撮った写真をプリンターで現像する際に、カメラとプリンターをつなぐ配線がありますよね?その配線と同じようなものだと思って下さい。

実はこの視神経は生下時には約120万本あります。
約120万本ある視神経が、毎年平均5千本ずつ減少していきます。
ここで皆さんはお気づきになったと思われますが、目の寿命は最大で240年です。しかし、その前に寿命が来ますので、多くの人は生きている間は目が見えておりますが、緑内障の患者さんはこの視神経に減少する速度が非常に早く、生きている間に障害が生じます。では緑内障になると、どのような障害が生じるのでしょうか。

緑内障で視神経が障害されると、一般的に視野障害が生じてくることが知られております。
この視野の障害ですが、早期の場合ではなかなか自分では感じないことが多いです。何故なら人間は通常は両眼で物を見ており、片眼が多少の視野異常があったとしても気が付かないことが多いです。
それ故、実際に患者さんが気付いて受診される頃にはかなり進行していることが多く、点眼や手術加療を行っても失明に至ることが多々あります。

緑内障になりやすい方となりにくい方

ではこの緑内障の患者さんは日本ではどの程度おられるのでしょうか?
実は40歳以上の方の約5%が緑内障と考えられております。
これは多治見スタディと言う緑内障の大規模な疫学統計調査による数字で、日本で概ね400万人程度が緑内障になっていると言われております。自分では早期発見が難しく、400万人もの方々が緑内障と疑われる状況ですので冒頭で述べたように失明原因の第一位になるのも納得ですね。では、この自覚症状の乏しい緑内障ですがどういった方がなるのでしょうか。

緑内障の方々の一部には遺伝性によるものもありますが、大部分の方は遺伝性に関係なく生じることが知られております。遺伝性に関係なく生じることが多い緑内障ではありますが、緑内障になりやすい方となりにくい方が目の奥を見る検査(眼底検査)を行うことで分かります。
では、どのような特徴が眼底に認められたら緑内障になりやすいのでしょうか。

以下の写真を用いて説明します。

眼底写真

図1の写真が眼底写真と呼ばれるものです。ここで注目してもらいたいのが、写真のなかにある赤丸の部分です。
この赤丸の中にある部分が視神経(視神経乳頭)です。
拡大すると図2の写真になります。一方、図3、4は緑内障の患者さんの代表的な視神経の写真です。

図3は図2と比べて白色の部分の拡大が認められます。
専門用語では視神経乳頭陥凹の拡大と言いますが、この白色の割合が大きい人程緑内障の傾向が高いと考えられております。

また、図4では図2と比べて視神経の下方に出血が認められております。専門用語では乳頭出血と言われ、この出血が見られる人も緑内障の傾向が高いと言われております。これ以外にも緑内障になると様々な特徴がみられます。写真に示した緑内障に代表的な特徴が見られる患者さんには視野検査を行い、緑内障かどうかの判断をします。眼底写真を判読することによって、おおよそではありますが緑内障かどうかのスクリーニングができます。

では眼底を判読する以外に緑内障の他の要因としてはどのようなものがあるでしょうか?
一番有名なものとして、眼圧の上昇が挙げられます。眼圧は所謂目の硬さです。目の中には毛様体という場所があり、そこから房水という物質が作られます。この房水が線維柱帯を経てシュレム管に送り出され眼外への血管に流れます。(右図参照)

正常な房水の流れ

正常な方の眼圧は10~21mmhgですが、緑内障の患者さんの一部では眼圧が21mmhg以上となります。
眼圧が上がった状態になると、目が硬くなり視神経に障害を来すようになります。
ある日突然に房水の循環経路が障害され、激しい眼の痛み、頭痛、目の充血が生じ、眼圧が30mmhg以上となる、閉塞隅角緑内障による急性緑内障発作という症状があるのですが、この場合は緊急で手術を行わないと数日で失明になることがあります。このことから、眼圧は非常に緑内障として重要な要因であることが分かります。
しかし、日本人の場合では眼圧上昇に伴う緑内障は実際のところ約2割しかおられません。緑内障の患者さんの大半は正常な眼圧の緑内障(正常眼圧緑内障と言います)です。ではこの緑内障ですが、診断された場合はどのような治療をするのでしょうか。

緑内障の治療法

緑内障の治療には一般的に点眼加療によるものと手術加療によるものが知られています。

点眼加療ではプロスタグランディン製剤、β遮断薬、炭酸脱水素酵素阻害薬、α2作動薬、Rock阻害薬、EP2受容体作動薬(新薬)が知られております。点眼薬の種類を見ても分かるように、実に多くの種類の点眼があります。正常眼圧緑内障の場合であっても上記薬剤を使用することによって、眼圧を15mmhg以下にすることが緑内障学会の治療方針として推奨されております。
例えば、眼圧が正常範囲内の17mmhg(正常値10~21mmhg)の患者さんの場合であっても、上記薬剤を用いて10mmhg前後にする方が緑内障の進行をより抑えることが知られております。
では次に手術加療についてです。

手術加療にはレーザーによる手術加療と、観血的手術加療があります。
レーザー加療ではLI(レーザー虹彩切開術)、SLT(選択的レーザー線維形成術)などが知られています
。LIは閉塞隅角緑内障の場合に適応となります。閉塞隅角緑内障は白内障などの影響で虹彩と水晶体が密着し房水の流れが閉じてしまった状態です。この状態を改善する為に図6赤矢印の虹彩の部分にレーザーで切開することにより房水の循環を改善する治療です。一方、SLTは点眼薬を用いても眼圧が20mmhg前後の場合などの開放隅角緑内障の患者さんに対し適応となります。これは、レーザーを線維柱帯に当てて排出路を拡大することで眼圧を抑える方法です。

閉塞隅角緑内障(LI適応)と開放隅角緑内障(SLT適応)

次に観血的手術加療にですが、線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)、線維柱帯切開術(トラベクロトミー)、チューブシャント術(Express、バルベルト)、隅角癒着解離術、istentなどの治療法が知られていますが、線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)は優れた眼圧下降効果が得られ、また多くの症例で適応可能であることから第一選択となることが多く、日本のみならず世界で最も数多く施術されております。
ではどうような手術方法かと言いますと、房水の流れが悪い場所の線維柱帯の一部を切除し、房水の出口を別に作る手術方法です。ただ、この線維柱帯切除術を施行した場合は術後の眼圧や感染症の管理が非常に重要となりますので、通常の場合では1週間程度の入院加療を行うか、1週間程度の毎日の外来受診が必要となります。

線維柱帯切除術(トラベクレクトミーの模式図)

緑内障について、よくあるご質問とその回答

Q1:緑内障は点眼や手術で完治しますか?

A1:緑内障は糖尿病と同じで完治することは通常はないです。しかし、点眼や手術加療を行うことによって進行を遅らすことは可能です。

Q2:緑内障の点眼の副作用ってどんなのがありますか?

A2:例えば緑内障治療で、最もfirst choiceで使用されるプロスタグランディン製剤では、長期間使用することで、目の周辺部が黒くなることや、顔の彫が深くなるなどの副作用が知られています。

Q3:欠けた視野は改善しますか?

A3:残念ながら、点眼や手術加療を行っても欠けた視野は改善されることはありません。しかし、最初に述べたように点眼や手術加療で進行を遅らすことは可能です。

Q4:緑内障になるといずれ失明すると聞いたのですがそうでしょうか?

A4:緑内障の進行の程度は人によって様々です。50代、60代で失明状態になる方もいますが、一方では80代で日常生活に不自由なく暮らせる程度の方もおられますので、過度に悲観的になる必要性はないと考えます。

Q5:緑内障の予防にサプリとか飲んだ方がいいですか?

A5:緑内障の為のサプリメントもありますが、通常の場合は飲む必要はないと考えています。緑内障と疑わる患者さんに関しては定期的な受診で早期発見、早期治療が重要であると考えます。信頼できる眼科医に受診するのが一番だと思います。