緑内障について

緑内障とは

緑内障という病気を皆さんご存知でしょうか?
実はこの緑内障という病気は日本で失明の原因の第一位の病気です。
ではこの緑内障という病気がどういった病気なのか詳しく説明します。
まずこの緑内障という病気ですが、どういう病態か述べますと眼の中にある視神経が加齢や眼圧の上昇などによって痛んでしまう病気です。この視神経というのは映像を脳に伝える機能を有しております。
例えるならば、皆さんがデジタルカメラで撮った写真をプリンターで現像する際に、カメラとプリンターをつなぐ配線がありますよね?その配線と同じようなものだと思って下さい。

実はこの視神経は生下時には約120万本あります。
約120万本ある視神経が、毎年平均5千本ずつ減少していきます。
ここで皆さんはお気づきになったと思われますが、目の寿命は最大で240年です。しかし、その前に寿命が来ますので、多くの人は生きている間は目が見えておりますが、緑内障の患者さんはこの視神経に減少する速度が非常に早く、生きている間に障害が生じます。では緑内障になると、どのような障害が生じるのでしょうか。

緑内障で視神経が障害されると、一般的に視野障害が生じてくることが知られております。
この視野の障害ですが、早期の場合ではなかなか自分では感じないことが多いです。何故なら人間は通常は両眼で物を見ており、片眼が多少の視野異常があったとしても気が付かないことが多いです。
それ故、実際に患者さんが気付いて受診される頃にはかなり進行していることが多く、点眼や手術加療を行っても失明に至ることが多々あります。

緑内障になりやすい方となりにくい方

ではこの緑内障の患者さんは日本ではどの程度おられるのでしょうか?
実は40歳以上の方の約5%が緑内障と考えられております。
これは多治見スタディと言う緑内障の大規模な疫学統計調査による数字で、日本で概ね400万人程度が緑内障になっていると言われております。自分では早期発見が難しく、400万人もの方々が緑内障と疑われる状況ですので冒頭で述べたように失明原因の第一位になるのも納得ですね。では、この自覚症状の乏しい緑内障ですがどういった方がなるのでしょうか。

緑内障の方々の一部には遺伝性によるものもありますが、大部分の方は遺伝性に関係なく生じることが知られております。遺伝性に関係なく生じることが多い緑内障ではありますが、緑内障になりやすい方となりにくい方が目の奥を見る検査(眼底検査)を行うことで分かります。
では、どのような特徴が眼底に認められたら緑内障になりやすいのでしょうか。

以下の写真を用いて説明します。

眼底写真

図1の写真が眼底写真と呼ばれるものです。ここで注目してもらいたいのが、写真のなかにある赤丸の部分です。
この赤丸の中にある部分が視神経(視神経乳頭)です。
拡大すると図2の写真になります。一方、図3、4は緑内障の患者さんの代表的な視神経の写真です。

図3は図2と比べて白色の部分の拡大が認められます。
専門用語では視神経乳頭陥凹の拡大と言いますが、この白色の割合が大きい人程緑内障の傾向が高いと考えられております。

また、図4では図2と比べて視神経の下方に出血が認められております。専門用語では乳頭出血と言われ、この出血が見られる人も緑内障の傾向が高いと言われております。これ以外にも緑内障になると様々な特徴がみられます。写真に示した緑内障に代表的な特徴が見られる患者さんには視野検査を行い、緑内障かどうかの判断をします。眼底写真を判読することによって、おおよそではありますが緑内障かどうかのスクリーニングができます。

では眼底を判読する以外に緑内障の他の要因としてはどのようなものがあるでしょうか?
一番有名なものとして、眼圧の上昇が挙げられます。眼圧は所謂目の硬さです。目の中には毛様体という場所があり、そこから房水という物質が作られます。この房水が線維柱帯を経てシュレム管に送り出され眼外への血管に流れます。(右図参照)

正常な房水の流れ

正常な方の眼圧は10~21mmhgですが、緑内障の患者さんの一部では眼圧が21mmhg以上となります。
眼圧が上がった状態になると、目が硬くなり視神経に障害を来すようになります。
ある日突然に房水の循環経路が障害され、激しい眼の痛み、頭痛、目の充血が生じ、眼圧が30mmhg以上となる、閉塞隅角緑内障による急性緑内障発作という症状があるのですが、この場合は緊急で手術を行わないと数日で失明になることがあります。このことから、眼圧は非常に緑内障として重要な要因であることが分かります。
しかし、日本人の場合では眼圧上昇に伴う緑内障は実際のところ約2割しかおられません。緑内障の患者さんの大半は正常な眼圧の緑内障(正常眼圧緑内障と言います)です。ではこの緑内障ですが、診断された場合はどのような治療をするのでしょうか。

緑内障の治療法

緑内障の治療には一般的に点眼加療によるものと手術加療によるものが知られています。

点眼加療ではプロスタグランディン製剤、β遮断薬、炭酸脱水素酵素阻害薬、α2作動薬、Rock阻害薬、EP2受容体作動薬(新薬)が知られております。点眼薬の種類を見ても分かるように、実に多くの種類の点眼があります。正常眼圧緑内障の場合であっても上記薬剤を使用することによって、眼圧を15mmhg以下にすることが緑内障学会の治療方針として推奨されております。
例えば、眼圧が正常範囲内の17mmhg(正常値10~21mmhg)の患者さんの場合であっても、上記薬剤を用いて10mmhg前後にする方が緑内障の進行をより抑えることが知られております。
では次に手術加療についてです。

手術加療にはレーザーによる手術加療と、観血的手術加療があります。
レーザー加療ではLI(レーザー虹彩切開術)、SLT(選択的レーザー線維形成術)などが知られています
。LIは閉塞隅角緑内障の場合に適応となります。閉塞隅角緑内障は白内障などの影響で虹彩と水晶体が密着し房水の流れが閉じてしまった状態です。この状態を改善する為に図6赤矢印の虹彩の部分にレーザーで切開することにより房水の循環を改善する治療です。一方、SLTは点眼薬を用いても眼圧が20mmhg前後の場合などの開放隅角緑内障の患者さんに対し適応となります。これは、レーザーを線維柱帯に当てて排出路を拡大することで眼圧を抑える方法です。

閉塞隅角緑内障(LI適応)と開放隅角緑内障(SLT適応)

次に観血的手術加療にですが、線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)、線維柱帯切開術(トラベクロトミー)、チューブシャント術(Express、バルベルト)、隅角癒着解離術、istentなどの治療法が知られていますが、線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)は優れた眼圧下降効果が得られ、また多くの症例で適応可能であることから第一選択となることが多く、日本のみならず世界で最も数多く施術されております。
ではどうような手術方法かと言いますと、房水の流れが悪い場所の線維柱帯の一部を切除し、房水の出口を別に作る手術方法です。ただ、この線維柱帯切除術を施行した場合は術後の眼圧や感染症の管理が非常に重要となりますので、通常の場合では1週間程度の入院加療を行うか、1週間程度の毎日の外来受診が必要となります。

線維柱帯切除術(トラベクレクトミーの模式図)

緑内障について、よくあるご質問とその回答

Q1:緑内障は点眼や手術で完治しますか?

A1:緑内障は糖尿病と同じで完治することは通常はないです。しかし、点眼や手術加療を行うことによって進行を遅らすことは可能です。

Q2:緑内障の点眼の副作用ってどんなのがありますか?

A2:例えば緑内障治療で、最もfirst choiceで使用されるプロスタグランディン製剤では、長期間使用することで、目の周辺部が黒くなることや、顔の彫が深くなるなどの副作用が知られています。

Q3:欠けた視野は改善しますか?

A3:残念ながら、点眼や手術加療を行っても欠けた視野は改善されることはありません。しかし、最初に述べたように点眼や手術加療で進行を遅らすことは可能です。

Q4:緑内障になるといずれ失明すると聞いたのですがそうでしょうか?

A4:緑内障の進行の程度は人によって様々です。50代、60代で失明状態になる方もいますが、一方では80代で日常生活に不自由なく暮らせる程度の方もおられますので、過度に悲観的になる必要性はないと考えます。

Q5:緑内障の予防にサプリとか飲んだ方がいいですか?

A5:緑内障の為のサプリメントもありますが、通常の場合は飲む必要はないと考えています。緑内障と疑わる患者さんに関しては定期的な受診で早期発見、早期治療が重要であると考えます。信頼できる眼科医に受診するのが一番だと思います。